弁護士 和賀 弘恵

解決事例

2019年06月05日

不倫に関する慰謝料と名誉棄損で三者(依頼者、相手の夫妻)がかかわった事例

■依頼者
女性

 

■事案の概要
依頼者は職場の男性と不貞関係にあったが、別れ話が出てそれがこじれたことで、男性は妻にそのことを打ち明けた。その後、男性とその妻は、男性の携帯電話を使って職場のグループラインで依頼者との不倫に関する情報を拡散させ、妻からは不貞行為の慰謝料請求について裁判を申し立てられた。一方、依頼者はグループラインでの情報の拡散に対して、夫妻それぞれに名誉棄損を訴えることとなった。

 

■解決結果
不倫相手の妻からの慰謝料については、依頼者から妻に160万円の支払いを命じる判決となった。しかし不貞行為の責任は依頼者だけでなく男性にもあるため、共同して慰謝料を負担すべきと弁護士が男性と交渉し、男性がそれを認めたことで依頼者から妻への慰謝料は80万円に減額となった。
一方、依頼者の名誉棄損の訴えについては、不倫相手の男性に70万円、その妻に20万円の損害賠償金の支払いが命じられた。
(金銭的な面からみた場合には、依頼者は夫妻から10万円の支払いを受ける結果となった)

 

■弁護士からのコメント
この事例には、2つのポイントがあります。
1つは「求償権」という権利が民法で定められていることです。簡単に説明すると、今回の場合のように、当事者二人が共同して不貞行為を行ったにもかかわらず、その一方が自身の責任部分を超えて慰謝料を支払った際には,もう一方の共同行為者に自己の責任を超過する分を請求できることをいいます。今回の事例は、この求償権に基づいて弁護士が男性に80万円の負担を求め合意を得ました。不倫の責任はどちらか一方だけが負うべきものではない、ということです。
もう一つのポイントは名誉棄損が認定されたことです。夫妻は一時の感情によりグループラインで怒りをぶちまけたのかもしれませんが、職場に情報が拡散することは依頼人にとって精神的苦痛が大きく仕事にも差しさわりがあります。その点を弁護士は裁判官に説明し夫妻には損害賠償金の支払いが命じられました。